アートとカルチャー
 
       
  バリの静寂の日


 
 

世界中には様々な宗教や文化があり、新年を祝うかたちも様々だ。例えば、中国ではチャイニーズ・ニューイヤーがあり、「ゴンジーファッチャイ」と祝い合うし、イスラム社会では独自のムハラム年に新年を祝う。その他世界のほとんどの人々はグレゴリアンカレンダーに沿って1月1日の元旦に新年を祝う。

バリでも同様だ。ただバリ人は多くの違った暦のシステムを使う。今ではビジネスや政府の関係上、グレゴリアンカレンダーを使ってはいるが、基本的に縁起の良い日や寺院の創立記念日、儀式、聖なる舞踏の日や家を建てたり結婚式の日取りや葬儀や埋葬の日を決めるのには、バリ人は2つの暦を使う。1つは パウコン(週という意味のウクからきている)ともう1つはサシー(月という意味)だ。 ウクにはシンタから始まり30のアイテムがあり、ワトゥグヌンで終わる。 パウコンとは14世紀にジャワから持ち込まれた1年を210日とする暦で、バリで行われる宗教的な行事は全てこの暦にそっている。サシーはインドを起源にしたに12ヶ月の月暦で神々へ敬意を払う日を決めるのに重要な役割を司る。

私たちは新年をにぎやかに迎えるが、反対にバリ人の新年は静寂に包まれる。 この日はニュピと呼ばれ、起元78年から始まったサカ・ヒンズーの新年の祝い方だ。

ニュピは、自然とのバランスを持ち、また保つ日だ。これはインドのカニスカ王がキゲン78年に王位についた時の物語からきている。王はヒンズー教社会と仏教社会を受入れた博識ある王とひて有名となった。その当時、アジ・サカはダルマヤトラ(ヒンズー教の布教)にインドネシアを訪れ、この地にサカ暦を紹介した。

ニュピの日は下記のようなものだ:

  • Melasti or Mekiyis or Melis (three days before Nyepi)
    メラスティとはプラティマもしくはアルチャ、プラリンガ(像)を清めるという意味で、精神を浄化し、神へ近ずくシンボルとされている。儀式は全ての自然を清め、またアメルタ(永遠の命)を海や他の水(湖や川など)からさずかり為のものとされる。ニュピの3日前に村の寺院の全ての神の肖像などは川に運ばれ、色鮮やかな儀式が執り行われる。 そして寺院に再び持ち帰る前にバルナ神、バリのネプチューンにより洗い清められる。
  • タウール クサンガ(ニュピ前日)
    ニュピの前日、バリの全ての村では村の中心の通りで悪霊が集うとされる盛大な祭り事が行われる。村人は通常オゴオゴ(竹で出来た怪物や悪魔)を創り、いけにえとする。オゴオゴは私たちの生活上から排除されなくてはならない、様々な種類の悪霊のシンボルとされる。 祭りはバリ全体で日没まで繰り広げられ、ブレガンジュールというバリのガムラン音楽が響き渡る。オゴオゴにはバリの伝統的な神話からに出て来る巨人が多く、鋭い牙、たるんだ目、恐ろしい神をもちたいまつの火に照らされている。通常はサカ・テルナという村の若者たちが指揮をとり、進められていき、オゴオゴが若者たちに担ぎ出されると村の活気は一層増す。人間と神、また人間同士、人間と自然間の調和をはかる為にタウールクサンガは村人の階級を問わず、一軒一軒全てを回る。夜になると様々な音が鳴らされ、たいまつに火がともされてブータカラ、つまり悪霊を島から追い出す為にオゴオゴに火がつけられる。
  • ニュピ
    ニュピ当日は全ての通りが静寂に包まれる− 島の誰も日常業務は行わない。通常、ペチャラングス(バリの伝統的な警備員)が通りを見て回り、警備にあたる。ペチャラングは黒い制服を着てウデンまたはデスター(バリの「帽子」で儀式に用いられる)をかぶっている。ペチャラン達の任務は主に通りの警備だが同時にニュピを妨害する全てのアクティビティーを止める役割もはたす。通りにいかなる交通も許されない。車だけではなく、人も歩いてはならない。人々は家の中に入り、火や明かりをつけたり、ラジオやテレビなど音は一切出してはならない。日常の仕事、レジャーやメイクラブにいたるまで全て、この日はお休みだ。この特別な日には犬の泣き声や虫の羽音の他は全て静寂に包まれる。ニュピは、世界が浄化され、新しいスタートを迎える日であり、人々は自分自身にその事を誓い、新たな年を迎える準備をする。
  • ニェンバクゲニ(ニュピの次の日)
    ニェンバクはチャトゥールベラタペニェピアンが終わり、ヒンズー教徒たちは皆、他人の過去の過ちを許し合う日でダーマチャンティを御蚕鳴る。ダーマチャンチはスローカ、ケキドゥン、ケカウィンなど(歌や詩の入った古代スクリプト)を読む事だ。

宗教的そして哲学的観点から見て、ニュピとは自己の価値観、愛、人間性、忍耐、親切などを自己分析する日である。バリのヒンズー教徒たちは様々な祝い事(聖なる日も含め)があるが、ニュピはたぶん、島中で最も重要かつ真剣な宗教行事であると言えよう。島の南部にあるリゾートホテルではニュピの宗教行事にはかかわらないとはいえ、外の通りは全て封鎖され、車(エアポートシャトルや救急車は除く)は走らず、警備員(ペチャラン)は人々をビーチから退ける。今年のニュピの日にもしバリ島に滞在するとしたら終日室内にいる事になるだろう。ニュピの日は、確かにバリ島をとてもユニークな島に感じさせる。

 

 

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